ワークショップ「語り合いの場 ふくしま」

第3回の会場の様子(福島市「カーロふくしま」2020年11月22日)
第3回の会場の様子(福島市「カーロふくしま」2020年11月22日)

開催報告

  

 第1回は2020年11月14日の郡山市商工会議所、第2回は2020年11月15日福島市のYWCA「カーロふくしま」で対面で、ワークショップを実施しました。第3回(2020年11月22日)から第6回(2021年3月21日)まではコロナ禍の拡大により、オンラインでワークショップを実施しました。その概要を下記で報告します。

 コロナ禍という厳しい環境の中ではありますが、調査参加者同士の交流を図るためのワークショップ「語り合いの場ふくしま」を開催することができました。ワークショップに参加された皆様、そして、この場をご支援いただいた皆様、ありがとうございました。ワークショップでは簡単な自己紹介のうえ、「コロナ禍の生活イメージマップ」を使って、コロナ禍で特に印象深い出来事を原発事故後の経験と比較して自由に語り合いました。これまで9年間、調査を通じて皆さんとつながってきた経験を生かして、ワークショップ「語り合いの場ふくしま」では、同級生の親御さん同士がつながる機会となればと考えています。どうぞよろしくお願いします。

コロナ禍の生活イメージマップ


 これまで調査にご協力いただいた皆様にお集まりいただき、原発事故後の生活をふり返り、語り合うことによって、その体験をより多くの方に共有する機会としたいと考え、「語り合いの場ふくしま」を開催いたしました。

 

 第1回の11月14日の郡山市のワークショップでは、思春期に差し掛かったお子さんとのかかわりや学校での心配事、そして原発事故、特に、補償格差によるもやもや感など、参加したお母さんたちが、ある程度、共通して持っていることがわかりました。

「9年前、原発事故後、頼れるところもなく、精神的な孤立感はすごかった。当時に比べれば、今回は、いつ終わるか将来への不安があるが、いろいろつながりもできていて、何とかしのげる。孤立を和らげ、やり過ごしていくには、吐き出す場があるかないかが大事。吐き出さないと新しい楽しい思い出も積み上げられない。」

 ある参加者の声です。

 

 第3回の11月22日は、コロナ禍の急拡大により、急遽、慣れない画面越しにではありましたが、福島市内の2カ所と名古屋市の合計3カ所で、つながることができました。(写真は会場の「カーロふくしま」の様子)

 

 いつもながら、話題は盛り沢山。今回は、原発事故後と今回のコロナ禍とで共通するのは、どの程度のリスクを感じて対処するかについての「温度差」があること、そして、東京など都会の人が、コロナ禍で「(リスクが高いとして)忌避される側」になった時に、原発事故後の福島県人の立場を理解するきっかけになるのかどうか、などが話されました。参加者の中には、県外に避難経験を持つ方も、避難したことがない方も参加されました。保養に関する意見もありました。

 

 第4回の2021年1月23日(土)は14:00~15:40にオンラインで開催しました。

 参加者の二本松市のKさんは、3・11直後、愛知県に避難し、2年弱暮らした経験があるとのこと。去年から、水を買うのをやめた。生活が落ち着いてきた。生活の中に放射能への対処方法が身についてきた感じ。キノコ類や自家栽培のものは避けるなどといったお話をされました。

 今回、Kさんは夫との間に、コロナのリスクに対する温度差を感じているそうです。原発事故後、放射線の健康影響を巡っては温度差はほとんどなかった。同じ意識で取り組めた。しかし、今回、コロナに対してリスクを感じないわけではないが、それより飲みに行きたい、外に出たいという気持ちが勝っているようだ。

 今回のコロナ禍では、原発事故後には起きなかった認識のずれを「調整する動き」が起きている。放射線の時は話題にしない、話題に上らなかった。例えば、今回、非常に親しい友人が郡山の病院に入院し手術した。お見舞いに行くかどうかをめぐって、他の友人と「話題になった」。友人はこちらの様子伺いをしている様子だった。それで、「郵送しよう」と提案したら、その友人も「そうだね」ということになり、お見舞いの品は郵便で送って、コロナが終わってから会おうねということになった。

 コロナでは認識のずれを調整する動きが行われたが、なぜ原発事故ではそうした試みが行われなかったのか。調整するには、まず話題になることが必要。話題にすらできない・しない原発の特徴とは何だろうか?といったことが話題になりました。

 

 参加者の皆様、そして、現地コーディネーターを担っていただきました「カーロふくしま」の佐藤さん、ありがとうございました。

 

参加者の感想

この10年、家族や子ども、そして生活を守るのに無我夢中であっという間でした。

みなさんのお話しを聞いてみたい。子育ての悩みや、今抱えている問題など、大変なのは自分だけじゃない。みんなも同じ。そう思ったのが参加しようと思った理由です。

いろいろなお話しを聞けて貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。

 

将来について一度ちゃんと家族と話をしようと決めました。

(郡山市 Sさん)


参加理由

①どんな方が調査をされているのか、お会いしてみたかった。

② 同世代の子育ての中で、週末の過ごし方や習い事などの情報交換。

③放射線について気をつけていることはあるのか、保養には行っているのか。

④身近な方で震災後、長く避難している方はいないので、避難されて戻ってきているならどんな生活だったのか、お聞きしてみたかった。

感想

 まずは、先生方がどのような思いで調査を続けているのかをお聞きし、私は色々な視点から福島の子育てを見ていただけるのはありがたいことだと感じています。ただ、様々な検査を受けることがモルモットのように感じる時もありますので、批判的な方もいるだろうと思いました。

 次に、参加者の皆さんの発言の中で、震災後の方が子どもたちを守る術が見えず、辛かったと話されていることは同感でした。そして、原発の立地市町村から避難されてきた方達の郡山市での生活の実情など、私は知らないことも多かったので、驚きました。ただ、私は補償を受けている方が福島県内で消費してもらえば、経済的に助かる人も多いと思ってもいます。

 福島県に暮らすもの同士、今回のように吐き出したいものは吐き出してまた明日を生きていければ良いと思いました。

 用意していただいたイメージマップにより、考えを深めることができたので、今回はフリーで話す時間が短くなりましたが、本来の流れで進めていただいたら良いと思いました。

本当に貴重な時間をありがとうございました。

(郡山市 Kさん)